
そのころ、私の父もガンで入院していたので、私は五階と六階に二人の入院患者をかかえることになった。息子の食事はアレルギー食。油脂、赤肉、青魚、加工品、糖分、果物、パン類は制限され、顔などから膿みが出始め、枕やパンツがベトベトになる状態になった。
顔をガーゼで被い、目と鼻と口だけ出してネットを被った。三日目の夜、病院へ行くと、点滴をし、心電図をとる器具を体に付けている。驚いて聞くと、「苦しい」と言う。先生に聞くと不整脈が出ているので検査をしているとのことであった。かなりひどい不整脈なので、「突然死などということもある」と言われた。いままでに「胸が苦しい」と言っていたときもあったが、そのせいだったのかと思いあたる。
検査結果は一週間位かかるが、結果によっては道立循環器病院へ転院することになるかも知れない。「顔のステロイド治療よりも心臓の方を優先的に考えた方がよい」と言われた。
一週間後、検査結果を持って道立病院へ行った。通院し様子をみながら治療することになった。顔中を包み、ミイラのような状態で七、八、九月の暑い盛りを過ごした。十月に免許証取得の講習を受けなければならない。先生にお願いし、状態のよい日を見て十月二十一日講習を受け、やっと免許証を手にすることができた。
バイクの免許を取ったことは、良かったのか、悪かったのか。彼は言う。「障害者でも事故を起こさず乗っていれば、だんだん皆が認めてくれる」と。その答えを出すのは彼自身である。
もう私が反対をしても聞き入れる年齢ではない。私も覚悟を決めて彼を見ている外はないと
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